おせっかいな店内放送(1)
駅ビルやSCなどで流れるアナウンス放送。
業界では「定時放送」という。
開店案内、閉店案内、ランチタイムのお知らせ、駐車場の案内、
ペット持ち込み禁止案内、禁煙案内、、、、、
ありとあらゆる事柄を来店客に知らせる為に、事前に録音して放送しているもの。
この中で開店や閉店など、特に重要なお知らせは、
日本語とあわせて英語のアナウンスも流れる。
都市部では英語圏の人たちへのサービスっていう理由もあるが、
「かっこつけ」で流す場合も多い。
こんな田舎でなんで?っていうところも多い。
「定時放送」は日本語だけでも放送パターンは異様に多く、うるさくて仕方がない。
ゆっくり買い物させてくれーっていいたい。
その「定時放送」がここ数年で変わった。流行りといってもいいかもしれない。
それは、今までの日本語、英語に、中国語(北京語)、ハングル語を加えること。
各商業施設ではその録音物のリニュアルにヤッキだ。
理由はお分かりと思うが、外国人観光客が急増し、その対応策として。
日本国内の消費が低迷している中、リテイリング分野での売上アップは、
今や中国人、韓国人旅行客に頼らざるを得ない。
かゆいところに手が届くサービスというわけだ。
しかし、そこまでして(うるさくしてまで)サービスする必要があるんだろうか。
例えば開店案内。
<日本語>
本日は、○○○にご来店いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様、おはようございます。
ただ今、○○○、開店のお時間でございます。
本日も、ごゆっくり、楽しいひと時をお過ごしくださいませ。
本日は、 ○○○にご来店くださいまして、誠にありがとうございます。
○○○、開店のお時間でございます。
<英語>
Good morning.
○○○ is now open.
Please enjoy our shops and restaurants.
Thank you for visiting ○○○ today.
と、だいたいみんなこんな感じ。
これだけでもかなりうざい。
これに北京語、ハングル語と続く。
さらに全部がもう1回繰り返される。
いやはやとにかくうるさくてたまりません。
日本人の顧客を犠牲にしていいわけがないし、
どれだけ中国、韓国人旅行客の為に役だっているのか疑問である。
そもそも今日本に来ている中国人観光客の多くはいわゆる富裕層、
簡単なことなら英語が通じる。
ここまでのサービスは必要ないのである。
我々がアジア各地を旅行しても、日本語の放送なんかないではないか。
以前、M不動産とT不動産の商業施設運営担当者にこのことを聞いてみた。
「ここまで外国人観光客向けの放送が増えるのはどうなんですか?
イメージサウンドやエリアコンセプトに合わせた音楽サービスとか、
せっかくつくってきたサウンドアイデンティティが薄くなっちゃいませんか?」
これに対して、意外にも二社とも「同感」との答えが返ってきた。
本音はあまりやりたくない。
現場は分かっているのである。
推測するに、観光客を囲うため、競合他社に負けないために、
上から指示されてのことだろう。
もちろん、これは店内放送だけの問題じゃなく、いろんなサービス部門で起こっている。
あれもこれもやらなきゃ、ってんで担当者はゆっくり考える暇もないわけだ。
よいサービスとは何かという視点に立ち、館内の「定時放送」は、
その役割りや演出方法を大きく見直す時期にきているのではないだろうか。